非正規雇用でも老後の年金はしっかり受け取れますか?
Q: 非正規雇用でも老後の年金はしっかり受け取れますか?
A: はい、非正規雇用の方でも、一定の条件を満たしていれば老後の年金を受け取ることができます。ただし、加入している年金制度の種類や期間によって、受け取れる年金額は異なります。
日本の年金制度の基本
日本の公的年金制度は、大きく分けて「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
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国民年金(1階部分) 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方が加入する義務のある年金です。自営業者、学生、専業主婦(主夫)、そして多くの場合、非正規雇用の方もこの国民年金に加入しています。保険料を納付した期間などが合算して10年以上あれば、原則として65歳から老齢基礎年金として年金を受け取ることができます。
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厚生年金(2階部分) 会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する年金です。勤めている会社を通して加入し、保険料は会社と個人で折半して負担します。厚生年金に加入していた期間が長いほど、また給与が高いほど、将来受け取れる年金額が増える仕組みです。
非正規雇用の方が年金を受け取るために重要なこと
非正規雇用の方の場合、ご自身の働き方によって国民年金のみに加入しているケースと、厚生年金にも加入しているケースがあります。
国民年金のみに加入している場合
パートやアルバイトなどで働いていても、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件を満たさない場合、国民年金のみに加入することになります。この場合、将来受け取れるのは老齢基礎年金のみとなり、年金額は、保険料を納めた期間に応じて決まります。全期間保険料を納付した場合でも、受け取れる年金額には限りがあります。
厚生年金にも加入している場合
非正規雇用の方であっても、以下の条件を満たす場合は厚生年金への加入が義務付けられています。
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一般的な条件
- 所定労働時間および所定労働日数が、正社員の4分の3以上であること。
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特定の条件(短時間労働者) 従業員数101人以上の企業(2024年10月からは従業員数51人以上の企業)で働く方の場合、以下の全ての条件を満たすと厚生年金に加入します。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること。
- 賃金が月額8.8万円以上であること。
- 継続して2ヶ月以上の雇用が見込まれること。
- 学生ではないこと。
ご自身の勤務先が上記の条件に該当するかどうかを確認することは重要です。厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取ることができ、将来の年金額を増やすことにつながります。
将来受け取る年金額を確認する方法
ご自身が将来受け取る年金額の目安は、以下の方法で確認できます。
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ねんきん定期便 年に一度、日本年金機構から郵送されてくる書類です。これまでの年金加入期間や保険料納付額、将来受け取れる年金額の目安などが記載されています。50歳未満の方にはこれまでの加入実績に応じた年金額、50歳以上の方には老齢年金の見込額が記載されています。
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ねんきんネット インターネット上でご自身の年金情報を確認できるサービスです。ねんきん定期便の内容よりも詳細な情報や、将来の年金見込額を試算できる機能も利用できます。
非正規雇用の方が老後資金準備のためにできること
国民年金だけでは老後の生活費に不安がある場合や、厚生年金に加入していてもさらに資金を準備したい場合は、ご自身で対策を講じることも可能です。
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働き方の見直し 現在の職場での厚生年金加入条件を満たすように、勤務時間や日数を増やすことを検討します。または、厚生年金に加入できる別の職場を探すという選択肢もあります。
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iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用 ご自身で掛金を拠出し、運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できるメリットがあります。運用益も非課税です。原則として60歳まで引き出すことはできませんが、老後資金形成には非常に有効な手段です。
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つみたてNISAの活用 少額から始められる非課税投資制度です。年間投資上限額の範囲内で、一定の投資信託への投資から得られる利益が非課税になります。途中で引き出すことも可能で、老後資金だけでなく、他のライフイベントのための資金準備にも活用できます。
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国民年金基金・付加年金(国民年金のみ加入の方) 国民年金のみに加入している方が、将来受け取る年金額を増やすための制度です。
- 国民年金基金: 国民年金に上乗せする形で、終身年金を受け取れる私的年金制度です。掛金は全額所得控除の対象となります。
- 付加年金: 国民年金の保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることで、将来の年金額が「200円×付加保険料納付月数」で増える制度です。
これらの制度を上手に活用することで、老後の生活資金をより安定させることが期待できます。ご自身の状況に合わせて、無理のない範囲で計画的に準備を進めることが大切です。